一宮町は歴史や文化遺産より、海山に近い利を活かした自然を観光の前面に押し出す戦略と見た。
駅の西南に広がる小高い丘はトレッキングに、駅から歩いて30分ほどの九十九里浜は海水浴に、それぞれ最適。
また、市街地には玉前神社や加納藩陣屋跡だけでなく、歴史ある寺や古い商家などが連なっている。
一宮町は自然と文化が絶妙に調和した町だと分かる。
「近くのお寿司屋さんは自前の田んぼで穫れた米を使ってるんですよ」
今日見て歩いた一宮町の姿など、まだ表層部分もいいところだったのだ。
それに、こうして観光案内所のお姉さん相手に長々とお話できたのも玉依姫命のご神威かも知れない。
それぐらい、この町には奥深い魅力がある。
だがしかし、残念ながら電車の時間が来てしまった。
「また来ますね」
そう言って、後ろ髪を引かれる思いで観光案内所を後にした。
駅のホームに立つと、看板に描かれた一宮町のゆるキャラ「一宮いっちゃん」と目が合った。
どことなく案内所の女性と似ているような…そんな錯覚に囚われる。
「さすが縁結びの神様だけあるなぁ…」
どことなく去りがたい気持ちを心の片隅に抱いたまま、到着した電車に乗り込んだ。
[旅行日:2013年5月21日]