眼前に供されたのは、ごく普通の天丼。
だが天つゆがかかっておらず、小鉢に入った味噌ダレが傍に添えられている。
みそ天丼は天つゆではなく、信州特産の味噌を用いた味噌ダレをかけるのが特色。
とはいえ「みそ天丼」は諏訪に古くから伝わる伝統料理というわけではなく、近年のトレンドに乗じた「ご当地グルメ」。
試作が始まったのは平成15(2003)年頃、販売がスタートしたのは同17(2005)年3月4日というから10年強の歴史しかない。
また「信州諏訪みそ天丼会」の会員店舗だけが「諏訪みそ天丼」を名乗ることができ、さらに条件が二つある。
ひとつは天種に諏訪湖特産のワカサギや川海老、地元産の野菜など「信州諏訪の旬」の食材を用いること。
もうひとつは当然ながら、味噌ダレに諏訪産の味噌を使うことだ。
天ぷらに味噌ダレをかけて一口食べてみると普段食べ慣れている天丼とは確かに違う。
醤油味の天つゆが味噌味のタレになり、車海老が川海老だから当たり前なのだが。
でも味噌ダレの味わいは新鮮で、これを普通の天丼にかけて食べる手もアリ。
特に諏訪産にこだわらず自分の家にある味噌でタレを拵えて天丼を作るのも面白い。
食事を終え、跨線橋を渡って再び駅東口のバス停へ。
駅から上社本宮までは距離が結構あり、徒歩でのアクセスは厳しいものがある。
だが、諏訪市には幸いなことに市内を循環する「かりんちゃんバス」がある。
14時39分、それに乗り込んで諏訪湖畔、工業団地、田圃のド真ん中など市内を走り回る。
約1時間後、上社本宮最寄りの停留所に着いたのは陽が傾きかけた頃だった。
目の前にある諏訪市博物館周辺には平日の夕方のせいか人影は疎ら。
県道16号を次々に走り去る車の群れだけが師走の忙しなさを映し出している。
[旅行日:2016年12月12日]