しかし、変わらなかったのは近鉄バファローズが背負っていた運命的な脆弱さ。
圧倒的な破壊力でパ・リーグを制した“いてまえ打線”も、ヤクルトのキャッチャー古田敦也に封じ込まれて沈黙。
結局1勝4敗で敗退し、またしても日本シリーズの制覇は成就ならなかった。
モニュメント以外の痕跡を探して周囲をウロついてみる。
だが、すぐに時間の無駄だと悟った。
訪れたのが夕方で、ちょうど小学生たちの下校時間。
カメラを抱えたオッサンがウロウロするには、あまり相応しいシチュエーションではない。
何かがあるとか、何にもないとか、そういった次元を超越した障壁が存在したのだ。
「さようなら~」
校門には学校の警備員が立ち、手を振りながら下校する小学生たちを送り出している。
「こんにちわ~」
警備員に怪しまれる前に、あえてこちらから挨拶してみた。
「あの銅像以外に何か藤井寺球場の痕跡って遺っていませんかね?」
「いやー、特にないですねぇ」
そう言うと警備員はプイッと踵を返し、帰宅する小学生たちへ再び挨拶を始めた。
単なる球場跡地の訪問者であり、子供たちに危害を及ぼすような不審者ではないと思わせることができたのだろう。
一見冷たい対応にも見えるが、取り敢えずは不信感の払拭には成功できたようで、そそくさと学校を後にする。
もし周辺をウロウロしたいのなら、学校が休みの日祝日にすべきか。
ただし最近では日祝日でも部活なんかで学校を開けている場合もあるので、変な行動は慎むべきなのは間違いないのだが。
平成16(2004)年、近鉄グループは採算上の問題からバファローズをオリックスに譲渡し、ブルーウェーブと合併させる旨を発表した。
これには近鉄ファンのみならずプロ野球ファンが猛反発。
日本プロ野球選手会も雇用機会の喪失につながることから、労働組合として初めてストライキを決行。
一種の“労働争議”の観を呈し、プロ野球業界の枠を超えた社会問題として大騒動になった。
その時のプロ野球選手会会長が、2001年の日本シリーズで近鉄の日本一を阻止した古田敦也だったところに歴史的な皮肉を感じる。
[旅行日:2014年6月23日]