大阪

キャッスル&ボールパーク⑤大阪編・後 六

大阪後R061

しかし、変わらなかったのは近鉄バファローズが背負っていた運命的な脆弱さ。

圧倒的な破壊力でパ・リーグを制した“いてまえ打線”も、ヤクルトのキャッチャー古田敦也に封じ込まれて沈黙。

結局1勝4敗で敗退し、またしても日本シリーズの制覇は成就ならなかった。

モニュメント以外の痕跡を探して周囲をウロついてみる。

だが、すぐに時間の無駄だと悟った。

訪れたのが夕方で、ちょうど小学生たちの下校時間。

カメラを抱えたオッサンがウロウロするには、あまり相応しいシチュエーションではない。

何かがあるとか、何にもないとか、そういった次元を超越した障壁が存在したのだ。

「さようなら~」

校門には学校の警備員が立ち、手を振りながら下校する小学生たちを送り出している。

「こんにちわ~」

警備員に怪しまれる前に、あえてこちらから挨拶してみた。

「あの銅像以外に何か藤井寺球場の痕跡って遺っていませんかね?」

「いやー、特にないですねぇ」

そう言うと警備員はプイッと踵を返し、帰宅する小学生たちへ再び挨拶を始めた。

単なる球場跡地の訪問者であり、子供たちに危害を及ぼすような不審者ではないと思わせることができたのだろう。

一見冷たい対応にも見えるが、取り敢えずは不信感の払拭には成功できたようで、そそくさと学校を後にする。

もし周辺をウロウロしたいのなら、学校が休みの日祝日にすべきか。

ただし最近では日祝日でも部活なんかで学校を開けている場合もあるので、変な行動は慎むべきなのは間違いないのだが。

平成16(2004)年、近鉄グループは採算上の問題からバファローズをオリックスに譲渡し、ブルーウェーブと合併させる旨を発表した。

これには近鉄ファンのみならずプロ野球ファンが猛反発。

日本プロ野球選手会も雇用機会の喪失につながることから、労働組合として初めてストライキを決行。

一種の“労働争議”の観を呈し、プロ野球業界の枠を超えた社会問題として大騒動になった。

その時のプロ野球選手会会長が、2001年の日本シリーズで近鉄の日本一を阻止した古田敦也だったところに歴史的な皮肉を感じる。

[旅行日:2014年6月23日]

キャッスル&ボールパーク⑤大阪編・後 五

大阪後R051

「巨人はロッテより弱い」発言はプロ野球の歴史を彩った“迷言”として、たまに今でも蒸し返されたりしている。

そう本人が言ったわけでもないのに勝手に独り歩きし、日本シリーズの趨勢まで左右してしまったこの言葉。

思えば前に日本一へ最も近づいた昭和54年の日本シリーズも「江夏の21球」で広島にうっちゃられた。

この「江夏の21球」も後世になってノンフィクション作家の故・山際淳司氏の著作から広まったもの。

肝心の試合内容そのものではなく、作家の著書名や新聞記者の捏造記事によって、その敗戦が記憶されるという悲劇。

このあたりにも、近鉄バファローズというチームが背負った運命的な脆弱さというものを感じさせる。

平成9(1997)年、大阪ドームが完成すると近鉄は本拠地を移転。

藤井寺球場は平成17(2005)年に閉鎖、翌年解体された。

跡地は北(ホームベース)側が四天王寺学園に売却され学校用地に。

南(外野)側には現在、大規模なマンションが立っている。

大阪ドームへ移転した近鉄は平成11(1999)年にチーム名を「大阪近鉄バファローズ」と改称。

地元大阪への密着ぶりをアピールすることで盛り上げていこうという戦略を採った。

ところが改称してからというもの2年連続で最下位に。

地元密着が絵に描いた餅になりかけた矢先の平成13(2001)年、大阪近鉄はパ・リーグを12年ぶりに制覇。

しかも北川博敏が日本プロ野球史上初の「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打」で締めくくるという、これ以上ない幕切れ。

前年からチームを率いた梨田昌孝監督は、最下位からの優勝という快挙を達成。

同じ監督で最下位の翌年に優勝したのはパ・リーグ史上初。

日本プロ野球史を見渡しても、昭和50(1975)年の最下位から翌年優勝した巨人の長嶋茂雄監督以来2人目。

そして78勝(60敗2分)という勝利数もまた、球団新記録だった。

これで一時は離れかけた“地元”が再び“密着”するかと思いきや…。

日本シリーズの舞台は、もちろん初開催となる大阪ドーム。

対戦相手は東京が本拠地のヤクルトスワローズで、まさに“東西対決”。

巨人が相手だった前回の日本シリーズも“東西対決”ではあったのだが。

平成最初の年に行われた前回は、近鉄が屋外の藤井寺球場で相手の巨人が屋内の東京ドーム。

21世紀最初の年に行われた今回は、近鉄が屋内の大阪ドームで相手のヤクルトが屋外の神宮球場。

時代が遷ろうにつれ、試合が行われた環境も劇的に変わったものだ。

[旅行日:2014年6月23日]
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