過去にプロ野球を題材にした漫画劇画は星の数ほどあったが、南海ホークスがテーマの作品は「あぶさん」ぐらい。
しかも連載の初期は南海が低迷していた地味な時代だけに、野球漫画というより野球を下敷きにしたヒューマンストーリーみたいなもの。
それでも門田や山本が「あぶさん」に実名で登場したからこそ、全国的に知名度が高かったという面もある。
スポーツ新聞の紙面では片隅のベタ記事でも、月2回発行される「ビッグコミックオリジナル」では堂々の主役を飾る。
「あぶさん」がホークスを世に広めた功績は計り知れない。
それでも昭和末期の大阪球場に閑古鳥が鳴いていたのは、南海ホークスが漫画の世界にしか存在しない架空の球団だと多くの読者が勘違いしていたせいか。
9階から屋外の階段を降りて8階へ。
そこには円形の劇場が設えてある。
すり鉢状に配置されたベンチは大阪球場のスタンドを彷彿とさせる。
すり鉢の底に当たるステージ部分にはホームベース型のモニュメントが埋め込まれている。
大阪球場のスタンドは傾斜が急なことで有名だった。
もともと狭い敷地に建てた上、スタンドの下にテナントを誘致するために傾斜角度を上げ、なんと37度にも達していた。
おかげでフィールド全体を眼下に収めることができ観戦しやすかった。
反面、階段も恐ろしく急角度で、酔っぱらいが転げ落ちるという事件がよくあったそうだ。
屋外の階段をブラブラしながら降り、2階のキャニオンストリートへ。
ここには大阪球場でホームベースとマウンドプレートが存在した場所と全く同じ位置に、ホームベースとマウンドプレートのモニュメントが埋め込まれている。
阪急西宮ガーデンズと同様、ここにも南海のホークスと大阪球場に対する愛が垣間見えるようだ。
なんばパークスを後にし、南海なんば駅へ向かう。
先ほど見た551蓬莱が脳裏を一瞬よぎったが、立ち寄ることなく関西国際空港行きの電車に乗り込んだ。
新宿を立ち、福岡から広島を経て、西宮から大阪へと巡ってきた4泊4日の旅も、そろそろフィナーレ。
関空20時45分発、成田行のジェットスター・ジャパンGK210便に搭乗。
かと思いきや、ダイヤが乱れて20分のディレイ。
初めてLCCを利用したのだが、この程度のことは我慢の範囲内なのだろうか?
21時05分、ジェットスターのエアバスA320はようやく関空を離陸。
機窓に輝く大阪の夜景を眺めながら4日間にわたる旅の思い出を、ひとり噛み締めたのだった。
[旅行日:2014年6月23日]