12時50分、特急バスは高山バスセンターを松本へ向けて出発した。
市街地を抜けて山間いを奥へと進むにつれ、薄曇りの空は鉛色の濃度を深めていく。
山襞が折り重なる隙間を縫うように道が走り、バスのエンジンが唸りを上げて坂を駆け上がる。
1時間弱ほどでバスは平湯バスターミナルに到着し、10分間の休憩。
ここは「アルプス街道平湯」という日帰り温泉施設で、食堂や売店を備えている。
奥飛騨温泉郷の平湯温泉にあり、広い駐車場を備えたドライブイン施設でもあるのだが、見たところ駐車場はそれほど埋まっていない。
それもそうだろう、ここまで雪深い山道をウネウネ登って来なくてはならないのだ。
よほど雪道に自信のあるドライバーじゃなければ、とてもじゃないが怖くて近寄れない。
時間があればゆったり温泉を堪能したいところだが、たった10分では寛ぐどころの話ではない。
しかし、中に入らずとも寛げる場所はある。
それは…足湯。
館外にあるのでサッと入ることができ、しかも無料。
けど、それすらも時間が足らなかったのでパッと眺めて終わり。
売店で唐揚げとサラミ、ビールを購入してアタフタとバスへ戻った。
すると、ターミナルから新たに乗車してきた客が何人かいる。
そうか、ここで下車して温泉や食堂で寛ぎ、高山から来る後続の松本行きに乗れば良かったわけか。
松本へ向けて再び走り出したバスの車窓から常緑樹の緑と雪の白が斑らに入り混じる山肌を眺めつつ、
唐揚げを齧りビールを呷る。
だが、連続するトンネルの壁面を見ている時間のほうが長くて興醒め。
ウトウトしているとバスは松本の都市圏に入っていた。
前方に松本電鉄の新島々駅が見え、やがて新島々バスターミナルに停車。
ここで下車して電車で行こうかと考えているうちにバスは出発してしまった。
[旅行日:2016年12月11日]