諏訪下春033*

そういえば、まだキチンと参拝していなかったことを思い出した。

先出の説明板にお参りの仕方が記されていたので、その通りやってみる。

一 正面で一礼し、手を合わせて「よろずおさまりますように」と心で念じる。
二 心の中で願い事を唱えながら、石仏の周りを時計回りに3周する。
三 正面に戻り「よろずおさめました」と唱えてから一礼する。

真冬の平日の昼下がり、周囲には人っ子一人いない中、たった一人で石仏の周りを3べんも回るのは照れるというか。

どうしても叶えたい願い事でもなければ、なかなかに気恥ずかしい。。

訪れる人が多い季節であれば群集心理が働いて「石仏も みんなで回れば 恥ずくない」のだろうけど。

ちなみに、このお参りの仕方は諏訪大社でもどこかのお寺でもなく、下諏訪の観光協会と商工会議所が提唱しているもの。

なるほど、どちらかと言えば宗教っぽさより観光臭の方を強く感じたお参りの仕方だったのも頷ける。

そんな俗世の些事など我関せずと、黙して何も語らない石仏に別れを告げた。

諏訪下春037*

暫くして後ろを振り返ると、冬枯れて寒々とした風景の中に石仏がポツンと座っている。

その姿はまるで、長年の風雪に耐えながら黙々と念仏を唱えているかのようにも見えた。

帰路は浮島を経由せず直進し、自動車も通れる大きな橋を渡る。

その手前にあるのが「万治の石仏」と刻まれた石碑。

揮毫は「芸術は爆発だ!」でおなじみ、故・岡本太郎画伯の手によるものだ。

万治の石仏が世間に広く知られるようになったのは20年近く前のこと。

御柱祭を見学に来た岡本太郎や新田次郎らが偶然この石像を見て驚嘆し、講演や雑誌の記事などで世間に広く紹介したのがきっかけだった。

岡本が万治の石仏を初めて見た時「世界中歩いてみたがこんな面白いもの見たことない」と語ったほどの衝撃を受けた。という

また、下諏訪温泉みなとや旅館の「岡本語録」には、

「奈良の秘仏より万治の石仏を見てると心が豊かになる」
「カッコ良さより内面が問題」

といった言葉が遺されている。

仏教の様式美に則ってカッコ良く彫刻された古都の仏像より、様式美を取っぱらって魂を刻み込んだ野良の石仏にこそ、内面から発せられる「爆発」的な要素を感じたのだろうか?

岡本太郎の専門家ではないので決め付けはできないが、概ねそうじゃないかと個人的には思う。

諏訪下春37*

[旅行日:2016年12月12日]