諏訪下秋28

神楽殿を過ぎると正面には拝殿がデンと待ち構えている。

二重楼門造りで両側に片拝殿を従えている珍しい構造。

江戸中期の絵図面によると、中央の拝殿は帝屋(御門戸屋)、片拝殿は回廊と記されているそうだ。

幣拝殿は昭和58(1983)年に神楽殿とともに国の重要文化財に指定されている。

向かって左側の片拝殿を見る。

現在の建物は初代立川和四郎富棟の施工で、安永10(1781)年の春に建立された。

一方の春宮は芝宮(伊藤)長左衛門が請負い、秋宮より後に着工したものの、1年早い安永9(1780)年に竣工させている。

春宮と秋宮は同じ絵図面が与えられたようで、大きさこそ違うものの構造は同じ。

立川と芝宮それぞれの彫刻の技量により、両社の建築は競われている。

次は右側の片拝殿へ。

手前に珍しい木が植栽されている。

幹の色から「白松」と呼ばれる三葉の松。

原産地は中国大陸で、初めて日本に入ったのは明治の中ごろ。

諏訪大社の白松は大正8(1919)年、京城(現・韓国ソウル)在住の諏訪出身者から寄贈されたもの。

昭和39(1964)年5月12日、天皇皇后両陛下が行幸啓の際に親しくご覧頂いたという。

昭和天皇還暦のお祝いの折、皇居にも植樹されたそうだ。

諏訪下秋29

諏訪大社は四宮すべてに本殿がない。

その代わりというか、他の神社では本殿が鎮座している場所に「御宝殿」が立ち、その奥にある御神木を御神体としている。

秋宮の御神木は飛騨一宮水無神社の項でも登場した一位[いちい]の木、春宮は杉の木だ。

諏訪神社といえば「御柱祭」。

「みはしらまつり」とも「おんばしらまつり」とも呼ばれる「日本三大奇祭」のひとつ。

ただし、どの祭りを以って「三」というのか諸説あり、定まっていないようだ。

御神木を御神体として崇める形態は、巨岩や大木といった神籬[ひもろぎ]に神が宿るという太古の自然信仰が今に受け継がれているともいえる。

拝殿から奥へグルリと回り込み、塀越しに御宝殿を見る。

茅葺屋根で神明造りの建物が左右に二棟並んでおり、新しい方を神殿、古い方を権殿という。

御宝殿は七年に一度、御柱祭が行われる寅年と申年に建て替えられる。

その際は御遷座祭が行われ、寅年から申年までは向かって右側、申年から寅年までは向かって左側で行われるそうだ。

祀られているのは建御名方神と八坂刀売神の御霊。

本殿ではないとはいえ、社殿には千木もあれば鰹木も乗っている。

実質的に本殿の役割を果たしているかのようだ。

諏訪下秋33

[旅行日:2016年12月12日]