諏訪下秋12

夕食を求めて街に出る。

下諏訪温泉は旅館が多く、食事だけという店が意外と少ない。

小規模な温泉場は入浴から食事、飲酒からお土産まで旅館内で済む「オールインワン」が主流。

例えば熱海や別府といった大規模な歓楽地と、隣接する箱根や湯布院を比較してみれば両者の違いは明らかだ。

そんなことを考えながら町中を探し回ったものの、ただでさえ店の数が少ないうえ日曜日の夜でもあり閉めている店も多く、なかなかこれといった食事処に行き当たらない。

結局、駅前に戻ってくると、どこからか桑田佳祐、続いて松任谷由実の歌声が聞こえてきた。

どうやら〝音源〟は駅前で明かりが灯っている唯一の居酒屋「養老の滝」の模様。

BGMの選曲センスが気になったので、ここへ止む無く入ってみた。

止む無く…とは無礼な言い方かも知れないが、なにせ「養老の滝」は日本中どこでも見かける大手の居酒屋チェーン。

なにせ自宅最寄りの駅前にもあるぐらいなので、普通なら選択肢には入れない飲み屋ではあるのだが。

ただ「養老の滝」は昭和13(1938)年、先ほど電車を乗り換えた松本で創業している。

これも何かの縁かも知れないと思い、暖簾をくぐった。

日曜の夜ということもあってか、店内は空いている。

隣接する日本電産サンキョーの従業員と思しき男女グループが一組いるぐらい。

おなじみ「養老ビール」を飲みながら、お通しと「おつまミミガー」をツツいていると、山本彩の「ひといきつきながら」という曲が流れてきた。

山本彩はNMB48のキャプテン。

今春まで放送されていたNHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」でAKB48が歌っていた主題歌「365日の紙飛行機」のメインボーカルとして、AKBのファン層以外にも知名度が広まった。

しかし、この曲「ひといきつきながら」はAKBグループと全く無関係。

元々JT(日本たばこ産業)のCMソングで、彼女が歌う遥か以前から使われていた。

それだけにAKB的なギミックが一切排除された、彼女本来の歌唱力を堪能できる貴重な曲なのだ。

[旅行日:2016年12月11日]