平日の真っ昼間だというのに三町重伝建地区は国内外の観光客でごった返している。
江戸時代と変わらない道幅に大勢の観光客が押し寄せているので、明らかにオーバーフロー気味。
ゆっくりと建造物を見て回るどころの話ではない。
高山駅へ引き上げるべく橋を渡ろうとした刹那、袂に佇む石碑が目に止まった。
「高山の夜」と刻まれたその石碑は、昭和45(1969)年に発売された御当地ソングの記念碑。
岐阜県を地盤に活動する演歌歌手、しいの実[みのる]のデビュー曲だ。
作詞作曲は地元高山の人だが、しいの自身は九州の出身である。
それも大分県宇佐市…豊前一宮宇佐神宮の鎮座地。
飛騨と豊前の一之宮の間に結ばれた見えない絆が「高山の夜」を生んだ…というのは、こじつけ過ぎるか。
宮川を渡ると人の群れはまるで霧が晴れたかのようにスーッと消え去った。
「国分寺通り」こと国道158号線を駅の方角へ歩いていくと、右側に寺の入り口が見える。
飛騨国分寺、正式な名称を「金光明四天王護国之寺」という。
山門は国道から一歩奥まったところにあり、よくある普通の寺だと見誤れば何気なく通り過ぎてしまったろう。
この山門が建てられたのは元文4(1739)年、飛騨の名匠松田太右衞門の手によるものと棟札にはある。
[旅行日:2016年12月11日]