来た道を引き返し、大鳥居の前をグルリと回り込み、絵馬殿の裏を抜けて境内の北側へと向かう。
奥の駐車場から来る場合この北参道を抜けると、わざわざ正面に回ることなく楼門の前に出ることができる。
参道には資材を積んだ軽トラックが停まり、業者の男衆が来るべき正月の初詣に向けて黙々と作業を続けている。
だが北参道には進まず、山の方角へ続く道に向かう。
ここまでたびたび登場している“聖地”位山。
その名称は樫の木の一種「櫟[いちい]」に由来する。
位山には櫟の原生林があり、天然記念物に指定されている。
その昔、この櫟で謹製した笏[しゃく]を朝廷に献上。
笏というのは束帯で威儀を整えるため右手に持つ細長い板のこと。
聖徳太子の肖像画で手に持っているアレだ。
すると、朝廷から櫟の木に対して一位の官位が下賜された。
そこから木は一位、山は位山と呼ばれるようになったという。
現在でも天皇即位と伊勢神宮式年遷宮には、水無神社から位山の櫟製の笏が献上されているそうだ。
本殿北側にある境内林の散策を続ける。
そこに異形の樹相を呈している木を見つけた。
一つの根から3本の幹が空に向かって伸び、根元には無数の脇芽が噴き出している。
樹齢は推定450年、目通り7。2m、樹高30mとソコソコ大きい。
安永年間に大原騒動で荒廃した社殿を修繕する際、元木の一部を伐採して用材にしたとも伝わる。
その折に裏山が切り開かれ、元木が現在の場所に植え替えられたという。
[旅行日:2016年12月11日]