水無22-023

境内に視線を向けると神社にありがちな朱色の彩りがまるでない。

隅から隅まで薄墨で描かれたようなモノトーンで統一されている。

飛騨一ノ宮駅の赤屋根は水無神社のどこを見て塗られたのだろう?

直接の関係は無いのかも知れないが、赤屋根が間抜けに思えてくるから不思議だ。

鳥居をくぐって境内に入ると、右側に妙にねじれた木の幹がある。

正確には幹の途中でバッサリ伐られた根の部分。

それでも目通り(立っている人間の目の高さの位置)で直径1。5mはあろうか。

これは「拗の木」といって、摩訶不思議な伝説を持つ檜[ひのき]の大木…の痕跡だ。

その昔、檜の高さが数十メートルにも達したことから、周囲の日当たりが悪くなった。

そこで社家や近所の住民が伐って用材にしようと画策したのだが。

檜は一夜のうちに幹はおろか枝葉に至るまでグニャッと拗[ね]じ曲がってしまったという。

それで「拗の木」と呼ぶのだとか。

一方、この木は江戸時代の中頃に、水無神社の貴重な森林を守る働きを見せている。

大洪水で宮川流域の橋や家屋が流出し、甚大な被害が発生した時のこと。

飛騨高山代官の大原彦四郎紹正[つぐまさ]は橋を再建するため、神域の大檜を用材として差し出すよう命令。

ところが大原騒動で酷い目に遭った村人達は、どうしても素直に従う気にはなれず。

そんな折、氏子衆の中に気転の効く者がいて、拗の木を示しながらこう復命した。

「木を切ろうとしたら、御神意なのか一夜でこんなに拗じれてしまいました」

すると「拗の木」だけでなく他の檜も切ることが沙汰止みになったという。

よく見ると幹は反時計周りに捻れている。

こうなった原因は陽光や風の影響による説、または内部で起こった細胞の分裂による説など諸説ある。

だが、決定的な原因は良く分からないそうだ。

それはともかく、村人からは昔から神霊の宿る霊木として篤く信仰を集めていた。

特に若い婦人衆がこの木に願をかけ、姑の意地悪を封じてもらったという言い伝えも残っている。

[旅行日:2016年12月11日]