建部004

大津駅から10分も歩けば琵琶湖の湖岸に出る。

湖面は夜明け前の闇に溶け込み、濃紺の空色の中で穏やかな波が岸辺に打ち寄せている。

滋賀県の面積の1/6を占める琵琶湖。

その大きさは地図を見れば理解できるが、直に見ると印象は全く違う。

これはもはや、海。

ただ、磯の香りがしないだけだ。

建部006

琵琶湖から大津駅に戻る途中、旧東海道と交差した。

東海道五十三次のうち大津宿は江戸から数えて53番目、つまり最後の宿場町。

ここまで来たら、いっそ京都へ直行すればいいのに…と現代人の自分は思うのだが。

ところが大津宿、実は東海道五十三次中でも最多の人口を有する最大の宿場町だった。

 江戸時代の大津は宿場町に加え、琵琶湖水運の要となる港町の機能も併せ持っていた。

「津」という言葉は「舟着き場」とか「渡し場」という意味。

まさに「大津」という地名は、街の体を表しているわけだ。

宿場と港、両方の機能が大津を東海道五十三次最大の宿場町に押し上げる要因になったといえる。

 東海道を西へ進むうち、次第に夜が白々と明けてきた。

新聞配達の自転車とすれ違い、一日が始まる息吹を感じる。

この狭い道幅は自動車でなく歩いて旅する人々に合ったサイズ。

古街道ならではの歴史を今に伝えているかのようだ。

先方に京阪石山坂本線の踏切が見えてきた。

中央大通りからここまで1キロ弱。

僅かな距離ながら東海道の風情を味わえた…ような気がする。

建部008

[旅行日:2016年12月10日]