②60岩鼻の坂

天理教会の前から右に坂が続いている。
岩鼻の井戸と北台武家屋敷を結ぶ「岩鼻の坂」。

上水道など存在しない江戸時代、武家屋敷で働く人々は井戸水を運搬するため、この坂を幾度も往復したのだろう。

そう考えながら上ると、水の有り難みが身に染みる坂かも知れない。

②61北浜口番所

再び北台に戻り、番所の坂へ。
商人の町ではなく、その反対側、バスターミナル方面へ下りていく坂だ。

その名の通り、ここは江戸時代「北浜口の番所」があった跡。
城下町に通じる道に設けられた6ヶ所ある番所のうちのひとつ。

番所とは城下への人馬の往来を監視する施設。
明け六つ(午前6時)と暮れ六つ(午後6時)に開閉されたという。

ほかに魚町口、寺町ロ、馬場尾口、清水寺口、城鼻ロとあったが、現在あるのは復元されたここのみ。
 
入り口には冠木門が設けられ、坂の両側は鬱蒼とした竹林で、下界と隔てる「結界」っぽさが漂う。

江戸時代は坂の下に番屋があり、目の前は海。
瀬戸内を渡ってきた船が乗り付け、物資が城下に運び込まれたという。

それだけでなく、大坂や高松から文化や情報を受け入れる窓口ともなった。
杵築の町の形成に大きな役割を果たした坂と言えよう。

②62番所の坂

番所の坂を下りると正面に「ホテルいな里」が立っている。

もともと杵築は宿泊施設が少ない町で、大きなホテルはここぐらい。
建物自体は少々古く、フロントも“受付”と呼んだほうが相応しいほどこじんまり。

接客対応もチェーンホテルの画一的な対応に慣れている向きには面喰らうかも知れない。

が、ホテルだと思うから面喰らうのであり、旅館だと思えば「こんなもんか」という感じ。

ハードウェアはホテルでも運営しているソフトウェアは旅館だと思えば逆に面白い。

チェックインして一休みした後、上階の展望大浴場へ。
杵築の町を眺めながら、天然温泉に身を沈めてみる。

窓が武家屋敷と反対側を向いており、眺めが少々味気ない。
それでも杵築に到着した段階では宿も決まっていなかった状態。

温泉までは期待していなかったので、ある意味で嬉しい誤算だ。

②65aホテルいな里

夜、夕食がてら街へ繰り出す。

先ほど訪れた商人の町は昼間の観光用繁華街で、夜に関してはホテル近辺が繁華街の中心っぽい印象を受ける。

だが、ここは敢えて番所の坂を上り、大原邸の横を通り過ぎ、酢屋の坂を下り、谷町通り商店街へ足を向けた。

案の定ほとんどの店はシャッターを下ろし、時おり通り過ぎる車のヘッドライトが暗闇を切り裂いていく。

とはいえ飲食店が皆無というわけでもなく、灯りが漏れている店がいくつかある。

そんな中で「遊 ゆとり」という居酒屋が気になり、フラリと入ってみた。

②63遊ゆとり外観

江戸時代というより、大正から昭和初期のカフェーっぽい外装が気に入ったのだ。

店内は意外に広く、しかも結構混んでいるが、団体の客らしく賑わいはテーブル席だけ。

誰もいないカウンター席にスッと座り、ビールと大分からあげを注文する。

大分からあげはベースのしょうゆだれが程よく効いた、ビールに合う一品。

続いて、麦焼酎「とっぱい」のお湯割を注文する。
「とっぱい」は国東市にある南酒造の本格麦焼酎。

製造量が少ないためか、いいちこや二階堂に比べて見かける機会が少ない。

これに合うアテは何かと品書きを眺める。
そこで目に止まったのが「砂ずり唐おろしだれにんにく風味」。

「砂ずり」とは砂肝のことで、唐辛子と大根おろしと大蒜を混ぜたタレで和えてある。

砂肝のシャリシャリした歯触りと甘辛いタレが麦焼酎と絶妙なマリアージュを描く。

この店を選んで正解だったと思う。

②64遊ゆとり料理


[旅行日:2016年4月11日]