一ノ鳥居を出、参拝前に素通りした茶店が視界に入った。
改めて眺めてみると左から漬物「すぐきや六郎兵衛」、軽食「みそぎ茶屋」、焼餅「葵家やきもち」の三店が軒を連ねている。
すぐき(酸茎)とは千枚漬、柴漬と並ぶ京都三大漬物のひとつで、蕪の一種である酸茎菜を漬け込んだ乳酸発酵による漬物。
江戸期元禄時代の食品事典「本朝食鑑」によると、酸茎という名の由来は「年を経て酸味を生ずる」からと記されている。
酸茎菜の栽培と漬物の製法は桃山時代、上賀茂神社の社家である賀茂氏が始めたというのが定説。
まず、酸茎菜は土地を選ぶ品種で、適作地が上賀茂一帯に限られていたのがその理由。
さらに社家が製法を秘伝として門外不出とし、朝廷や貴族などへの高級な贈答品として用いていた。
このため、すぐきの製法が一般に公開されたのは、わずか300年ほど前の話。
それも飢饉による難民救済のため製法を公開したのがきっかけだったそうだ。
商品として販売され始めたのも京都では明治末期、大阪と東京では大正時代から。
長い歴史を持ちながらも商品としては新顔…昔と今の表情を併せ持つ京都という都市の性格を、すぐきは反映している漬物のようにも見える。
[旅行日:2014年3月20日]