4t下鴨053

観光地にありがちな仰々しい大店ではなく、ごく小ぶりな店構えは清しく、元祖の名に相応しい。

カラリと戸を開け店内に入る。

まだ昼時前のせいか先客の姿はない。

席に着き、さっそく「みたらし団子」を注文した。

みたらし団子のルーツは、先ほど訪れた御手洗川や御手洗池。

土用になると池や川の底から清水がブクブク湧き出るといい、これもまた「鴨の七不思議」に数えられている。

その湧き上がる水の泡を象ったのがみたらし団子なのだそうだ。

小糠雨に映える下鴨本通の街路樹を眺めているうち、団子を乗せた皿が運ばれてきた。

焼いた小白玉5個を貫いた串が3本、それにみたらしの餡がかけてある。

団子屋やスーパーの甘味処で団子といえば普通、一串に白玉4個が基本。

20世紀末にNHK「みんなのうた」で「だんご3兄弟」が大ヒットしてからは、一串3玉の団子も増えた。

それを踏まえても、一串5玉は異形だ。

ここの団子は滋賀県産の上新粉で作った白玉を串に刺して焼いたもの。

餡は醬油に葛粉と黒糖を加えたものという。

皿には木匙が添えられ、餡を余すところなく賞味できる。

また、一串にさした団子5個のうち、先端のひとつが他の団子と離してある。

これは人間の頭部と四肢を抽象的に表現しているというが、本当だろうか?

しかも内一串の“頭部”団子には、爪楊枝がブッスリと突き刺さっている。

その姿が余りにもグロテスクで、どこか“京都の深い闇”みたいな、なんとも言えない恐怖感が胸の内に湧こうというもの。

[旅行日:2014年3月20日]