入口の土間に竈[おくどさん]が設えてある。
「おくどさん」とは竈[かまど]そのものではなく、正式には竈の神様を指す言葉。
しかも畿内でのみ用いられている“方言”のようなもの。
陰陽道[おんみょうどう]で土を司る神「土公神[どくじん]」に由来すると思われる。
入口を先へ進むと、お供えの材料や用具を洗ったりする中の間。
その先の台所奥の間は調理して盛り付けるスペース。
さらに奥には神前へお供えする順に並べておく配膳棚が設けてある。
また、御酒は酒殿で醸され、魚貝鳥類は贄殿で料理されていたそう。
こうして賀茂社の胃袋を満たしてきた大炊殿だが、文明2(1470)年6月10日に兵火のため焼失。
その後、大炊殿は酒殿を除いて現在地に再興された。
神社建築の中でも、この種の社殿が現存するのは非常に希で貴重なのだそうだ。
それにしても、先に見た供御所との違いは何だろう?
大炊殿は内部にお供え物のレプリカなどを展示した資料館的な存在なのに対し、供御所は今も使用されている現役の“台所”ということだろうか。
[旅行日:2014年3月20日]