4t下鴨043

唐門という名称は屋根の唐破風に由来するのは一目瞭然。

屋根の下に渡された欄間には葡萄の紋様が彫刻されており、別名「葡萄門」とも呼ばれている。

葡萄といえばワイン、西洋の神話には付き物だが、日本の神話でも重要なシーンで登場する。

古事記で伊邪那岐[いざなぎ]命が黄泉国で、見てはいけないという約束を破って伊邪那美[いざなみ]命の腐り果てた姿を見たときのこと

恐れ慄いた伊邪那岐命は一目散に逃げ出すが、伊邪那岐命は黄泉国の醜女神らに命じて後を追わせた。

あと一歩のところまで追い詰めてきた醜女神らに、伊邪那岐命は髪留めに結わえてあった黒い鬘[かずら](蔓草を束ねた冠)を外して投げ付けた。

すると地に落ちた鬘は葡萄葛[えびかずら]に変わり、その果実を醜女神らが端から食べ始めた。

その間に伊邪那岐命は何とか遠くまで逃げることができた…という話。

葡萄葛は野生の葡萄のことで、平安時代には薬草として用いられていたそうだ。

この欄間に掘られた葡萄棚の紋様は西洋にない日本独自のデザイン。

古事記の故事から、欄間の下をくぐれば御祓を受けるのと同じ意味があるのだとか。

拝観料は払わずに唐門だけをコッソリくぐらせてもらおうかとも思ったが。

あまりにセコいと思い返し、唐門を後にした。

[旅行日:2014年3月20日]