細殿の奥というか裏側に築地塀が横へと延びている。
その真ん中に小さな門。
門柱に「鴨社直会殿泉聲」と読みにくい崩字で記されている。
幸いなことに反対側の門柱横に解説板が立っており、そこに「かもしゃなおらいでんせんせい」と振り仮名が打ってあった。
かといって、ここが何に使われる神殿なのか見当が皆目つかないのだが。
説明板によると平安時代に大嘗祭で用いられる饗応殿が下賜され、ここへ直会殿として移築し、式年遷宮ごとに造替してきたという。
ところが昭和23(1948)年ごろに老朽化のため撤去され、その後は再建されることがなかったそうだ。
それから時代が下ること45年後の平成5(1993)年、伊勢神宮第61回式年遷宮の折に五丈殿の払い下げを受けた。
それを平成27(2015)年の第34回式年遷宮事業の一環として、伝統に従ってここに再興したのだそうだ。
五丈殿は雨天時にお祓いや遙拝などの儀式や、遷宮関係の諸祭で饗膳(儀式としての祝宴)が行われる建物。
ここでも同様の施設として使われているのかと、門から中を覗いて確認してみた。
確かに五丈殿っぽい建物が立ってはいるが、木製の壁が設えられ大きなガラス窓が嵌め込まれている。
内部には豪奢な椅子が配置され、確かに饗膳が行われる建物っぽい雰囲気が漂っている。
だが、伊勢神宮の五丈殿は屋根と柱だけで、壁などなく吹き抜け状態のはず。
なぜだろうと思った時、目に入ったのが車止めに掲げてある小さな注意書き。
「挙式関係者以外の立入はご遠慮下さい」
なるほど、饗膳といっても結婚式のほうだったか。
[旅行日:2014年3月20日]