福岡7-1福岡編ttl

地下鉄で博多駅へ。
バスの発車時間まで少し時間があるので、時間を潰そうと駅ビルの中をウロウロする。

平成23(2011)年、九州新幹線の全線開業に併せてリニューアルして以来、初めて訪れた博多駅は全く別の駅と化していた。

地下街には有為な時間を過ごせそうな一杯飲み屋や立ち飲み屋が散見されたが、残念なことにどこも満席!

駅は旅人のモノなんだから地元民は馴染みの店に行けよ! と独りごちつつ、駅を出て酒場を求め駅前を漂う。

しかし、これといった店に出くわさないまま彷徨うこと数十分、ようやくたどり着いたのが駅前の朝日ビル地下にあった居酒屋「石蔵」だった。

店先の黒板に手書きされていた「とくとくセット」、生ビール+焼酎2杯+料理3品で1900円…に惹かれての選択。

入り口が大きく開かれていたので気楽に入れ、カウンター席には誰もいなかったので窮屈な思いをすることもなく。

席に着くや、昼下がりに福岡競艇場で博多うどんを啜って以来、何も口にしていなかったことに気付く。

道理で喉が乾いているはず。
まずは突き出しの枝豆をアテに生ビールで乾いた喉を潤す。

「焼酎はどれにしますか?」

若い女性店員が尋ねてきたので、芋、それもお湯割りを選択する。
続いて料理3品が次々と運ばれてきた。

芝海老のフライ、明太子の玉子焼き巻き、刺身。
出来合にしてはどれも美味く、飛び込みで入った割には正解だったか。

焼酎がアッという間に底を突いたので、お替わりを注文。
一緒に博多の郷土料理「おきゅうと」を頼んでみる。

「おきゅうと」とは海藻を加工した寒天のような食材で、福岡・博多では朝食のお供に欠かせない一品との由。

以前から一度は食べて見たかった「おきゅうと」、初めての味わいは…味があるような、ないような。
どちらかといえば味そのものより食感を楽しむ料理にも思える。

いずれにせよ、胡瓜の千切りを「おきゅうと」で巻いたものと、冷酒を交互に口へ運べば、止めどなくなりそうな予感はする。

更にグラスが空いて焼酎のお替わりを頼もうかと思ったその時、テーブルの立て札が目に止まった。
そこにあったのは「えみ割り」…焼酎の青汁割りのことだ。

これまで様々な「割り」を喰らってきたが、さすがに青汁で割った焼酎は飲んだことがない。
これも旅の醍醐味とばかりに「えみ割り」を注文し、これまた博多名物「酢もつ」も一緒にオーダー。

「酢もつ」とは新鮮なモツを茹でて細切りにし、刻み葱とポン酢で和えた料理。
博多ではどこの居酒屋にもあるありふれたメニューらしいのだが、あまり他では見かけない。

「えみ割り」はホットとアイスをチョイスできるのだが、ここはお湯割りの流れを受けてホットを注文する。

一口飲んでみると美味いのか不味いのかよく分からないし、青汁の粉末が溶け残ってグラスの底に溜まるのもよろしくない

それに「酢もつ」との相性も青汁がポン酢の風味を打ち消してしまうせいか、あまりピンと来ない。
これならば普通のお湯割りのほうが「酢もつ」とマッチしていたような気がする。

ただ、これで「えみ割り」を全否定する気はない。むしろガッツリした肉料理にはピッタリではなかろうか。
もつ鍋なら好適なマリアージュが楽しめるかも知れない。

青汁の粉末があれば家庭でも普通に作れるわけだし、合わせる料理次第では焼酎を美味しく飲める手段としてアリだろう。

午後10時前、そろそろバスの発車時間が迫ってきた。石蔵ともお別れの時である。
1時間と少し居て会計は3000円強と、コストパフォーマンスもなかなか。

いつかまた博多駅で乗り換えの合間に時間が空いた時は、ここへ一杯飲りに来るとしよう。

福岡7-2⑦石蔵

午後10時35分、深夜高速バス「広福ライナー」は博多バスターミナルを出発した。
2×2の横4列シートは、ほぼ満席。女性の利用客が多いのにビックリした。

座席は最後方の窓側で、通路を挟んだ反対側はトイレ。
通路を行き来する客もおらず、なかなか快適。

暗闇に包まれた車内で微睡みながら、福岡の街に別れを告げたのだった。

福岡7-3広福ライナーK01

[旅行日:2014年6月20日]