細い道をウネウネと歩くうち、小さな入江に出た。
堤防の前に置いてある小さな木製の標識には「一之宮←」とだけ、白いペンキで記されている。
シンプルな標識と、エメラルドグリーンに輝く海のコントラストは、まるで一幅の絵のようだ。
道は海岸沿いから山の中へと分け入り、両脇を疎林や原っぱに挟まれながら歩き続ける。
すると、ここにも標識が立っていた。
素っ気なく「伊射波神社 右一之宮→」と墨書された簡素な木板が、木の棒に打ち付けられている。
一応このあたりの道は舗装されているので、それほど苦ではない。
歩いている途中、横を軽トラックが通り過ぎて行った。
このあたりまでは車で入って来られなくはないらしい。
しかし極端な隘路の上、下手に脱輪すると助けを呼ぶだけで一苦労。
道に慣れた地元の人でもなければ、とても車で向かうのは無理なように思える。
坂を下っていくと、二叉路に出た。
ここにも木製の標識があり「車|歩行者近道」と記されている。
不覚にも歩行者近道の存在には気付かなかった。道理で道が舗装されていたわけだ。