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再び南口鳥居の前まで戻る。鳥居と道を挟んだ向かい側に一軒の蕎麦屋がある。

手打ち蕎麦とお茶処「陽の坂(ひのさか)」。
店名は近隣の宿場町「日坂」に因んだものか。

事任八幡宮近辺には他に食べ物屋や土産物屋は見当たらず、ここしかない。
軒下にはパリッとした暖簾が下がり、営業中であることを謳っている。

その暖簾をくぐって木戸をカラリと開け、店内に入った。
「いらっしゃいませ~」

元気な声に迎えられて中に入ると、店内は木目調のデザインで統一され、温かみのある空間が広がっている。

テーブル席に就き、とりあえずNA(ノンアルコール)ビールを注文し、メニューを眺めながら何を頼むか考える。

ざる蕎麦は二八と十割の二種。
鴨せいろや天ぷら蕎麦などの種物もある。

蕎麦はつなぎの入った二八のほうが喉越しがよくて旨いと言われるが、ここは折角なので十割を注文。

「お蕎麦が出来るまで、こちらをどうぞ」

そう言って大女将らしき刀自が、お茶菓子を手渡してくれた。
表に『ことのままおこし』と記してある。

「事任の神様にちなんだお茶菓子なんですよ」
「あたり一面ぜんぶ茶畑ですもんね、さすが静岡」
「昼は蕎麦、午後からは静岡茶と和菓子のセットを楽しんで頂いてます」

『ことのままおこし』を眺めながら、突き出しの揚げ蕎麦をポリポリ齧り、NAビールを飲みつつ待つこと暫し、蕎麦が目の前に届いた。

まず、蕎麦だけを何もつけず口に含む。
口当たりが滑らかで、蕎麦の風味が口腔に広がる。

つゆは猪口に濃い目が少々という江戸前流。山葵も付けず薬味の葱も入れず、つゆだけで味わってみる。

[旅行日:2012年12月21日]