RJ洲崎02

頭髪は皆無で、緑のジャンパーに黒の作業ズボン。

その容貌たるや東京湾から引き上げられたタコ坊主。

いや、坊主にしては身躯がデカ過ぎる。

タコ入道と呼んだほうが相応しいか。

浦安や幕張を闊歩するオシャレな“千葉”県民ではなく、富津や木更津で鳴らした荒くれ漁師の末裔が如き“房総”族である。

タコ入道は電話を切ると、そのうち近くの乗客に悪態をつきはじめた。

「何見てんだタココラァ!」

そんなタコ入道に周囲の乗客は白い目を向け、ヒソヒソ。

「オイそこ! コソコソ喋ってねえで、かかってこいやゴルァ!」

気がついたら、とっくに電車は千葉駅を発車していた。

駅へ着くたび降車客は足早に駆け去り、乗車客はタコ入道を見て目を白黒させている。

「おぃおぃ、誰もオレのこと注意しに来ねぇのかよぉ、情けねぇ奴ばっかしだなぁ~」

もちろん、誰も注意しない。

車内で暴れているとか痴漢を働いているのなら話は別だが、ただ大声で下品なことを喚いているだけなので、放っておいたところで何の差し障りもない。

「あ~あ、ヤクザ屋さんでも喧嘩売ってこないかなぁ~」

電車の中でこうした阿呆をたしなめるヤクザ屋さんなど見たことがない。

もし一緒に警察に連行されでもしたら、下手すると共犯扱いされるのだから当然の話だ。

(旅行日:2012年12月17日)