さっそく瓊々杵命は使いを出して結婚を申し込んだところ、大山祇命は大喜び。
木花之佐久夜毘売命に山のような結納品を持たせ、ついでに姉の石長比売命(いはながひめのみこと)も一緒に添えて献上した。
ところが石長比売命は岩石の霊の化身であり、妹とは対照的な醜女(しこめ)…今で言うブス。
一目見るなり怖気づいた瓊瓊杵命は石長比売命だけを大山祇命のもとへ送り返し、妹とのみ寝床を共にした。
美女は優遇され、醜女は冷たくあしらわれる…神話の世界も今の世の中も変わらない“不変の真理”なのだろうか。
しかし、これを大山祇命は大いに恥じ、瓊々杵命に対して嘆き悲しんだ。
私が石長比売命を差し上げたのは岩石の精霊であるように、御子の命が雨が降ろうと風が吹こうと永久に盤石であるのを願ってのこと。
また、木花之佐久夜毘売命が木花の精霊であるように、桜花が咲き乱れるように栄えるのを願い、そう誓いを立てて差し上げたもの。
なのに姉だけ返されたのでは、天神の御子のお命といえども桜の花が散るごとく脆く儚くなるでしょう。
このため歴代天皇の寿命は長くないのだと、古事記は述べている。